クリスチアーノ・ロナウドをよく知らないあなたへ…今さら聞けないクリロナのキャリアを振り返ってみる

 6月3日にウエールズの首都・カーディフで、チャンピオンズリーグ決勝・レアル・マドリード対ユベントスが行われる。そのレアルのエースがポルトガル代表FWクリスチアーノ・ロナウドだ。5月17日のリーガエスパニョーラ・セルタ戦で2得点を挙げ、4-1での勝利に貢献。この試合での先制点が、欧州5大リーグ(プレミア、リーガ、ブンデス、セリエA、リーグアン)での367得点目となり、チェルシーやトッテナムで活躍したジミー・グリーブスが持っていた得点記録を塗り替え、数字上は歴史上の欧州ナンバーワンに浮上した。さらに21日のリーガ最終節・マラガ戦でも1ゴールを挙げ、チームを5季ぶり33度目の優勝に導いた。リーガ得点王の座はメッシに譲ったが、バルセロナのエースと常に世界ナンバーワン・ストライカーの座を争う男のキャリアをたどってみた。

 C・ロナウドを語る上でのポイントを3つに整理した。

名門クラブを渡り歩く選手キャリア

 1985年2月5日、ポルトガルのマデイラ島で生まれると、地元のクラブで頭角を現し、1997年にポルトガルの名門クラブ・スポルティング・リスボンのユースに入団したロナウド。そこでも順調に成長し、2002年10月には17歳でトップチームデビューを果たした。そしてこのシーズンが、現在まで母国・ポルトガルのリーグでプレーした唯一の年となっている。このオフ、親善試合で対戦したマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督がロナウドの才能に惚れ込み、イングランドの名門への移籍が決まった。

 ここでロナウドは、レアル・マドリードに移籍したイングランド代表のスター、デヴィット・ベッカムが背負っていた背番号7をつけることになる。元フランス代表FWエリック・カントナら、チームの顔が背負ってきたエースナンバーを10代で与えられたところに、大きな期待を寄せられていたことは明白だった。

 そんな大きなプレッシャーの中、最初の2年間は目立った結果を残せずに苦しんだが、2005-06年シーズンに自身初の公式戦2けた得点となる12ゴールを挙げると、ここから一気にブレーク。翌06-07年に23ゴール、07-08年には42ゴールを挙げ、プレミア・リーグの得点王(31ゴール)にも輝いた。その間にマンUは06-07年からプレミア・リーグ3連覇を達成し、07-08年のチャンピオンズリーグも制した。その原動力となった背番号7は、08年には自身初のバロンドール(欧州最優秀選手賞)にも輝いた。

 09-10年シーズンには、レアル・マドリードに移籍。ここでゴールハンターとしての才能がさらに開花する。負傷で出場が少なかった1年目でも公式戦35試合33得点、それ以降は毎シーズンのように50点以上を挙げている。

ドリブラーからストライカーへと進化したプレースタイル

 スポルティング、マンチェスターU時代は高速のシザーズフェイントを代名詞に、ドリブル突破からシュートまで持ち込むタイプのプレーヤーだったロナウド。しかしレアル・マドリードに移籍後は、そのプレースタイルがストライカーへと変貌していった。マンUを初めとして、アーセナル、チェルシー、リヴァプール、マンチェスター・シティと数多くの強豪クラブが存在し、中堅以下のクラブでもイングランド伝統のキック・アンド・ラッシュ(ロングボールを多用した戦術)の香りがまだ残っていたプレミア・リーグでは、ドリブル突破に必要なスペースがあった。

 しかしバルセロナとレアルの2強と言えるスペインでは、力で及ばない他のクラブはゴール前のスペースをしっかりと消した戦いを展開してくる傾向がある。そんな環境に対し、ロナウドは見事に適応する。ゴール前での細かい動き直しを覚え、元来持っていたシュートのうまさとヘディングの強さも生かし、ボックス内で勝負できるストライカーとしてのプレーを習得。悪癖と見られていた強引なドリブルは減り、よりシンプルにゴールを狙うハンターとして進化を遂げていった。

メッシとの比較

 ロナウドとメッシ、どちらが世界一か。そんな論争がサッカー界では繰り返されているが、いまだに答えは出ていない。ロナウド自身もそんな比較にはうんざりしていると言われており「フェラーリとポルシェを比べることはできない」という表現をつかっている。高い得点力は共通項だが、185センチの長身を生かして直線的なスピードに優れるロナウドと、169センチと小柄ながら細かいボールタッチで密集をすり抜けるプレーが得意なメッシと、プレースタイルはまったく違う。

 一方で短所は共通している。守備意識の低さだ。しかしそれもこのふたりが持つ怪物級の得点力の前では、些細なことにうつる。現代サッカーではFWにも組織的なプレスを求めることが当たり前になっているが、世界中でこのふたりだけは自らの意志で守備をさぼり、攻撃のチャンスを待つという『特権』が与えられているように映る。それでもチームを勝たせる得点力を持つふたりに、ここまで守備意識を徹底させることができた監督はまだいない。そんな中で、世界中の監督は守備をしないFWに対して「世界で守備をしなくても許されるのは、メッシとロナウドだけだ」と言った表現をしばしば使っている。