香川真司に第2の春は訪れるか。香川のベストポジションについて検証する

いきいきと、ボールを自由自在に操る香川真司の姿が、そこにはあった。4月1日、ドイツで最も熱いライバル関係と言われるシャルケ04とのルール-・ダービー。日本代表の試合から戻り、長距離移動等の影響でコンディション面が懸念されていたドルトムント・香川は、そんな不安を一蹴する。先発するとバイタル・エリアで何度もボールを呼び込み、チャンスを演出していく。そして後半立ち上がりの53分、ショートカウンターからDFラインの裏へ絶妙のタイミングで抜け出すと、MFウサマン・デンベレからのやや後方にずれたパスを絶妙なトラップでおさめてGKと1対1に。そして十分に引きつけ、併走したFWピエール=エメリク・オーバメヤンへラストパス。これをドルトムントのエースが難なく決めて、貴重な先制ゴールとなった。試合76分、セットプレーからの流れでシャルケのティロ・ケーラーに決められて追いつかれ、1対1のまま終了。しかし87分までプレーした香川は、1アシストながらゴールを決めたオーバメヤン以上に、ドイツのメディアからは高い評価を受けた。

この日、香川は1トップに入ったオーバメヤンの後方、デンベレとともにインサイドハーフの一角を務めた。スピードにあふれて突破力のあるデンベレがサイドに開いて仕掛ける一方、香川はデンベレやオーバメヤンが動いてできたバイタル・エリアのスペースに何度も潜り込み、後方からのパスを受けて攻撃の起点となった。オーバメヤンや、デンベレのスピードを生かす足の長いスルーパス、そしてリズムが悪いと見るやいなや、DFラインの近くまで下がってパスを引き出し攻撃のテンポを再構築するなど、司令塔として十二分の活躍だったと言えるだろう。ドルトムントでは今季、序盤は若手の台頭に押されて出番を失っていたが、公式戦ここ4試合は続けて先発出場。トーマス・トゥヘル監督の信頼度も、間違いなく増している。

日本代表では背番号10を背負い、主にトップ下や左サイドMFでプレーすることが多かった香川。ハリルホジッチ監督が就任してからはMF清武弘嗣の台頭もあって、そのポジションは不動のものではなくなっているが、それまでは本田圭佑とともにチームの絶対的存在だった。ゴールを取れなかった試合で「香川不発」と言う記事が新聞紙面に躍ることもあり、常にゴールを期待される存在だった。

セレッソ大阪時代、J2でプレーした2009年は44試合で27得点。ドルトムントでも加入2年目の2011-12シーズンにはブンデスリーガで31試合13得点を挙げており、得点力は香川の魅力のひとつだ。しかし香川の魅力はそれだけではない。ドイツでは「魔法使い」と賞されるファーストタッチで狭いスペースでもすっと前を向き、後方からの縦パスをビッグチャンスへと変える“錬金術”を持っている。

 さらに言えば、香川はプロ入り後にセレッソ大阪のレヴィー・クルピ監督によってトップ下の選手へとコンバートされたが、その以前はボランチ、セントラルハーフとしてプレーしていた選手だ。するするとスペースを見つけてはドリブルで攻め上がり、DFの視線を引きつけてのラストパス、そして時にはシュートも決める。それが香川本来のプレーなのかもしれない。日本代表でも最近ではハリルホジッチ監督が4-3-3のシステムを採用することで、UAE戦のように今までのセカンド・トップとして得点力がより期待されるトップ下より、少し下がり目のインサイドハーフで試合を組み立てる役割も増えてきた。その中で見せる左右両足から繰り出すフィードは非常に正確で、チームにとって有効だ。バイタル・エリアと、中盤の下がり目を行ったり来たりしながら、攻撃のリズムをつくるインサイドハーフ。ここが現在の香川に置いて適性のポジション、“家”なのではないかと感じる。

先月の日本代表・タイ戦ではトップ下で1得点と結果を出したが、厳しい見方をすればあくまで格下相手だ。かつて2010-11、11-12年シーズンで2連覇を果たしたドルトムントの主力として活躍し、世界有数のビッグクラブ・マンチェスターユナイテッドに移籍した12-13年シーズン前後が、トップ下としてブレークした香川の“全盛期”だったのかもしれない。しかし今回シャルケとの骨と骨とを削り合うような激しいゲームの中でみせたような、ひょうひょうとボールをさばいてチャンスをつくるプレーが日本代表でも発揮できるようになれば、インサイドハーフ、またはセントラル・ミッドフィルダーとして、香川は “第2の春”を迎えることができるのではないだろうか。